
電気を使って動作する機械、装置ならどんなものでもほとんど必ず使用されているのが、 “電線“ です。
今回は、機械、装置の電線について基礎から勉強し、必ず押さえるべきポイントについて解説します。
電線の役割とは
改めて、電線の役割を考えてみますと、 電線は、人間の体に例えると、血管であり、神経に相当します。どちらも電線と同じように線状のもので、体内(機械内)を張り巡らされていますね。
我々、人間の体の中では、胃腸で吸収されたエネルギーを伝える血管であり、脳からの指令を体全体に伝え、逆に体全体の感覚などあらゆる情報を脳に伝える神経の役割を持ちます。
機械の中での電線の役割は、人間の血管・神経の役割と全く同じです。電線を通して、電源からの電力を各ユニットに伝える血管の役割をもち、一方で、マイコン基板やPLCなど制御ユニットから駆動ユニットへの制御信号を伝え、機械内のセンサなどからの各種情報を受け取るための神経の役割をもちます。
制御ユニットや駆動ユニットなどとちがって、脇役に見られがちな電線は、もしかしたらあまり考えず適当に選んで使ってしまってる人もいるかもしれませんが(⇒新人のころの自分か?)、
一番重要なことは、電線の選定を間違えると燃えてしまう ということです。
自分の設計した製品が燃えてしまって、最終使用書であるお客さんに被害を与えることだけは避けたいですよね。そうならないためにも、ぜひ、基本をしっかり押さえておく必要があります。
電線の主な仕様
電線の仕様には様々な項目がありますが、その中でも、私の経験上でまずおさえておくべき重要な仕様は以下の4つになります。
- 適合規格(UL/PSE)
- 定格電圧・定格温度
- 電線太さAWG/SQ
- 電線色
では、一つづつ内容を見ていきましょう。
適合規格(UL/PSE)
電気系の解説の情報の中で、電線仕様として、UL規格というのを解説の一番にしているところはあまりないかもしません。ただ、実際の設計の実務上、電線を選定するときは、ここはUL何番の線、ここはUL何番の線を使おう!決めていきます。UL何番かを決めることは、すなわち、定格電圧/耐熱温度/耐電圧を決めることになるので、まず最初にUL規格を説明します。
UL規格というのは、アメリカ保険業者安全試験所「UL(Underwriters Laboratories Inc.)」が策定する、電気製品、材料、部品に関する認証規格です。UL規格認証を受けた電線は、規格を受けた仕様ごとに、UL何番という番号がついています。 UL認証には、Recognition(部品認証)とListing(完成品認証)というのがありますが、これについてはまた別の記事で説明したいと思います。
製品をアメリカに販売設置する際はUL認証を取得することが求められることが多く、その場合、装置内で使う電線についてもUL認証品を使用していることが必須になります。一方で、対象の製品装置が、国内のみで販売・設置という場合については、このUL認証は必要ではありません。 しかしながら、その会社によっては、社内で他に海外向け製品も扱ってたりする場合は、使用部材の設計・調達の標準化や電線の信頼性を担保する目的などで、その製品は国内のみでの販売であっても UL電線の使用を前提で設計している会社もあります。
また電源コードや機外に配線する電線やケーブル類は、各国それぞれの認証のとれた物を使用する必要があり、国内の場合は、電気用品安全法PSEマーク認証の電線やケーブルが必須となる点に注意が必要です。
定格電圧・定格温度
電線の仕様値として、まず選択するうえで重要なものとして、定格電圧・定格温度の2つがあります。。
- 定格電圧: 通電可能な電圧
- 定格温度: 使用可能な周囲温度
実際の使用条件に対して、十分マージンをもった定格仕様をもつ電線を使用する必要があります。
もし定格をオーバーして使ってしまうと絶縁部が破壊され、ショート・漏電が発生し単なる機械停止のみならず、発煙・発火といった事故につながるため、必ず使用箇所に応じた適正な仕様の電線を使う必要があります。。
UL電線の定格仕様の例としては以下のようなものがあります。
| UL No | 定格電圧 | 定格温度 | 絶縁体厚さ AWG20/0.5Sq | 外径 AWG20/0.5Sq | 使用箇所事例 |
|---|---|---|---|---|---|
| UL1007 | 300V | 80℃ | 0.46mm | 1.87mm | DC24V/5Vライン、信号ライン |
| UL1015 | 600V | 105℃ | 0.85mm | 2.65mm | AC100V/240V 電源ラインなど |
小型のFA 制御盤の中であれば、この2種の電線で、基本的にほぼカバーできます。
また、国内 PSEマーク品を使う場合は以下
| 型番 | 定格 電圧 | 定格 温度 | 絶縁体厚さ 0.5Sq | 外径 0.5Sq | |
|---|---|---|---|---|---|
| KV | 100V | 60℃ | 0.5mm | 1.9mm | DC24V/5Vライン、信号ライン |
| KIV | 600V | 60℃ | 0.8mm | 2.5mm | AC100V/240V 電源ラインなど |
KV線は、定格60℃とそこそこ低いので、電源やモータドライバなど発熱部品に触れるような場所には使う場合は注意が必要です。耐熱が必要な場合は、耐熱温度105℃のSHKVなどの使用が必要となります。
定格温度75℃のHKV線というのもありますが、私の経験上では、2次側のDC系の電線で、PSEマークが求められたことはないので、DC系の電線としては、UL1007線を使っておくのがいいとけば、基本的に問題なしと考えています。
電線太さ(AWG/SQ)
電線の太さにより、流せる電流(許容電流)が決まるため、電線の太さの選定は重要です。
電線は微小な抵抗をもっていますので、P=I^2*Rの電力損失により、発熱していきます。許容電流値を超えて電流を流して電線温度が上昇して、耐熱温度を超えてしまうと、電線被覆が溶けて中の芯線がむき出しとなり、地絡や電線通しのショートなどにより、発火してしまう危険性がありますので、十分マージンをもって使用する必要があります。
電線の太さを示す単位として、UL規格で認定された電線は、AWG(アメリカン・ワイヤー・ゲージ)で表記されます。
また、国内ではSq(Squeare)と表記され、1 Sq=1mm^2 の断面積となります。呼び方としては、スケア、略して、”スケ”と呼ばれています。
AWGとSqの換算表は以下のとおりになります。許容電流については、電線メーカや規定条件により数字は異なってきますので、実使用時は、かなりマージンを考慮したうえで使用する必要があります。
| AWG | 許容電流 UL1007 | 許容電流 UL1015 | Sq | 許容電流 KIV |
|---|---|---|---|---|
| AWG26 | 4 A | 0.12 Sq | ||
| AWG24 | 5 A | 0.2 Sq | ||
| AWG22 | 7 A | 10 A | 0.3 Sq | |
| AWG20 | 9 A | 13 A | 0.5 Sq | 9.6 A |
| AWG18 | 12 A | 18 A | 0.75 Sq | 12 A |
| AWG16 | 17 A | 24 A | 1.25 Sq | 19 A |
| AWG14 | 32 A | 2 Sq | 27 A |
上記許容電流値は、キャプションのとおり、30℃、気中1条架線時という条件ですので、周囲温度が高い場合、電線が複数束ねられている場合などは、許容電流値はさらに下がることになります。この条件による許容電流値の低減については、以下のサイトが参考になると思いますので紹介します。https://www.fujikura-dia.co.jp/tech/documents/allowable-current.php
電線色
どこの場所にどの電線色を使用するかは、機械安全分野における電気装置の安全を確保するための基本となる重要な国際規格であるIEC60204-1の「械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項」、その中で配線色について以下のように推奨されており、これを参考にしつつも、国内のみで販売の装置などは、各メーカにより一部使用している色は異なっている場合もあります。
IEC60204-1で推奨されている電線色(推奨色)
・配線は、表示もしくは色によって識別できるようにしなければなりません。
・使用可能色:黒、茶、赤、オレンジ、黄、緑、青(ライトブルーを含む)、紫、灰、白、ピンク、ターコイズ(青緑)
| 回路 | 色 |
|---|---|
| 交流電力回路 | 黒(中性線はライトブルー推奨) |
| 直流電力回路 | 黒 |
| 保護導体 | 緑・黄の組合わせ |
| 交流制御回路 | 赤 |
| 直流制御回路 | 青 |
| 例外回路 | オレンジ |
保護導体:緑・黄の組合わせ(1つの色が30%以上、70%以下)は保護導体/保護ボンディング導体以外に使用してはいけない。
<前述の配線色に従わなくてもよい場合>
・完全な内部配線済みの状態で購入した個別装置や所定の色の絶縁物が入手不能のとき。
・「黄・緑」の組合わせ以外で多芯ケーブルを使用するとき。
電線色の実際の使用例
前項で記載したように、国際規格で指定推奨されている色に対して、実際にはそれぞれのメーカにおいて、独自の色を使ってる事例をよく見ます。以下にその実例を記載しますので参考にしてください。
さすがに、保護導体の色、安全回路の電線色はどこのメーカも必ず同じ色を使ってます。
| 回路 | 電線色 |
|---|---|
| 交流電力回路 | 単相AC100Vの場合:黒白 三相AC200Vの場合:赤白黒(黄) |
| 直流電力回路 | 赤、青、黒 |
| 保護導体 | 緑・黄の組合わせ |
| 交流制御回路 | 赤、白 |
| 直流制御回路 | 青、その他 |
| 安全回路 | オレンジ |
まとめ
今回は、機械、装置の電線について、基礎から解説しました。要点をまとめると以下のとおりとなります。
- 電線の選定に必要な主な仕様として、主に 適合規格(UL/PSE)、定格電圧・温度、電線太さ(AWG/Sq)、電線色 などが重要。
- 電線は、アメリカ向け装置にはUL電線の選定が必須。国内装置の場合は、電源ケーブルや外部配線には国内規格のPSEマークの電線の選定が必須。UL番号、電線型式により、電圧と温度仕様が決まっている。
- 電線太さは、UL電線のAWGと国内電線のSqで表記され、許容電流が決められている。30℃、1本の場合など特定条件での仕様なので、十分マージンをもって使用する必要がある。
- 電線色は、IEC60204-1でも推奨色が記載されているが、国内装置では、設置線・安全回路を除いて、各メーカ独自で色を選択している場合が多い。

